剣術抄

とみ新蔵先生語録集

とみ先生の武のエッセンスともいえる語録を必要に応じて公開し、皆さまにも感じ取って頂けたら幸いで有ります。今後はドンドンと掲載していきます。まずはこれを一番に掲載しておきます。

基本であり極意の事
〇歩く時は頭が上下に動かず、身体も左右にブレない事。
〇刀を構えたら、全身脱力し、ヘソ下だけに気の力を込める事。
〇刀の柄は柔らかく握り、小指と薬指だけが締められている事。
〇刀は決して腕力で振らず、背筋と胸筋で振る事。
〇刀の切っ先に気がを入っている事。
〇これは刀尖にネバリを与え、例えば、正眼に構えたところを左右から、重い木刀で打撃されても刀尖がビクとも正中線からブレない事。
「ネバリの大事」。
正中線からブレたれば、隙を与え、その隙を狙って対手が前進されてから面・籠手を撃たれてたり、喉に突きが来てしまう事。
〇特別な構えはなく、基本として「無構」えだが、
自然八双は「後の先」での「合仕撃ち」に適しており、ブラリと下げた地ズリ下段は
「後の先」で対手の裏籠手斬りや腹・胸への刺突が行い易い事。
〇気迫攻めに間合いへ入り、対手から撃たせ「後の先」を狙うこと大事。
そのためにも「起こり無き」「太刀行きの迅速さ」が重大なり。
〇眼付けは対手を見ず、対手の後ろの景色辺りを半眼にて、ボヤ~~と観ること。
これは視界が拡がり、左横や右横への対手へ応じる眼付けなり。
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剣術は他の武術や武道と異なって「殺人の術」なので、
自分が死境に入ること大事なり。
武士道の本義もこの禅境にありしと存念す。とみ禅士

「剣先のネバリの大事」と書いたが、誠に重大なり。
1、 
例えば対手が、面や袈裟を斬撃して来て、対手の刃が頭上に来た時、
「後の先」で、対手の太刀へ被いにかぶさるように、合仕撃ちで、対手の籠手・ニの腕・肩などを狙い撃つ。
それには、自分の打撃の「速さ」も当然だが、対手も面打撃で、こちらも合仕撃ちに面への斬撃の時は、相打ちの可能性も生じるゆえ、特に剣先は「人中路」を真っ直ぐにネバッて撃つこと肝要なり。「人中路」とは自分の「身体の中心線」なり。
2、 
速い太刀筋とは腕力を使わずに、胸筋と背筋で斬撃すること。
3、
また剣先にネバリを発揮するには、肩を脱力し、両の肘を完全に伸ばし、剣先はより大きな弧を描き、臍下丹田だけに力を込めて撃つなり。
いわゆる「腹で撃つ」なり。
4、 
剣術は基本として無構えなれど、ダラリ下段か自然八双が、対手の攻撃を防ぐにも、こちらの攻撃にも利多し。
5、 
剣術は撃つだけでなく、剣先へ体重を乗せてそのままに前進してネバリ押し斬ることもありし。
6、
剣術は接近戦となれば、柄頭での顔面撃ち、柄での裏籠手打撃から、袈裟撃ち・面撃ちありし。脇差での刺突もあり。
さらに肩などを使っての体当たりあり。
足を使っての足ガラミで対手を崩し、そこを刺突・または斬撃するなり。
7、 
剣術に「フエイント技」は通用しない。
例えば左袈裟を撃つと見せて、右袈裟を撃とうなどは通用しない。
剣先が左袈裟から右袈裟への撃つとする、その瞬間に対手の剣先は、頭上か腕へ斬撃しているものである。
8、 
双手刀法には、サーベル・フエンシングなどの、如何なる片手剣法・繰法も通用しない。
片手刀法は剣先に「ネバリ」の出しようがないゆえとしるべし。

鍔の効用 鍔は掌が、柄から刃へとすべらないようにとの「スットパー」の役割もあるが、相手の攻撃を受けたら負けとなる「剣術の深み」を現わしている。 鍔無し刀の相手が、もし受けたら即、刃を滑り込ませ相手の右掌を切れるからだ。 それゆえ鍔無しの木刀での稽古もまた形骸化といえよう。 型稽古や組太刀稽古も、また、やむを得ざる形骸化なのだが、上達法の一つとして、その意味は分かる。 もちろん映画の殺陣のようなチャンチャンバラバラなどは、剣術にはあり得ないものである。